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blog<新収蔵品紹介>明治30年代の板葺き御殿飾り雛
*先日、昭和9年製の檜皮葺き御殿飾り雛をご紹介させていただいたばかりですが、昨日は、現在、大阪市内にお住まいの個人から寄贈のお申し出を受け、井上館長がご自宅まで荷受けに伺いました。
*京都の伏見から奈良に移られた女性(明治30年代生まれ)から、寄贈者(昭和18年生まれ)が譲り受けられ、かつての奈良のご自宅で節句ごとに飾り、保管なさっておられた雛人形です。近くで火災があり、すんでのことで類焼をまぬがれたお雛さま。手軽に持ち運ぶことなど不可能な、大きく豪華な一揃いですから、戦災はもちろん、様々な災害を越えて、百年以上の歳月を守り続けるのは大変なことだったと思います。
*御殿も人形も諸道具も木箱に納まったそれぞれを作業場で開梱し、細かいところを修理したり、手を加えたりしながら収蔵登録作業を行いました。木箱の中には、製作者の商標が貼られている場合があります。この雛飾りにおいては、添え飾る“花車”と“雪洞”に「御雛人形細工司/丸屋/大木平蔵」の商標が、御殿の上からつるし飾られる“桜と橘の薬玉”には「有職雲上流造花」の商標がみられます。明治中期から後期、京阪の地で作られ、裕福な町家で飾られた典型的な御殿飾りと思われますので、ここに画像を入れてご紹介させていただきます。
<御殿>
<雛人形>
江戸後期から明治前期にかけての京阪の御殿飾りには、五人囃子が付けられないことが多かったと思われます。江戸出身の五人囃子は武家の式楽である能楽を演奏している姿で作られるためでしょうか、貴族的な御殿の中には合わないと考えられたものと思われます。
<添え飾り>
<花車・雪洞>
*来春の雛人形展は、「江戸と明治のお雛さま」がテーマなので、当館所蔵の幕末から明治時代末期までの御殿飾り雛と合わせて、ご紹介させていただこうと思っております。寄贈下さいましたご家族の皆様に、心よりお礼申し上げます。
(学芸員・尾崎織女)
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