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手作りのクリスマスオーナメント*その3―麦わら細工・光をいただく天使
●パンが主食の国々において、小麦やライ麦、大麦などの麦は、いうまでもなく農耕の中心をなす重要な作物です。かつては、麦を収穫したあとに残される麦わらには、実りを司る穀物霊が宿っていると考えられ、一年の節目にあたるクリスマスには、麦わらを細工して数々のオーナメントが作られてきました。
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●北欧の国々では、クリスマス「ユール」に麦わらをベッドの下に敷いて寝たり、ユールが終わると火にくべ、残された灰を豊作祈願の麦わらを畑にまいたりする風習が残されています。麦わらに宿る穀物霊が新年の幸福を呼び、また畑に戻って、次の年の実りをもたらしてくれると考えられたためでしょう。
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●日本人が新年迎えに稲わらを用いてしめ飾りを作ることや、お正月が終わるととんど焼き(どんど焼き、左義長など)の火でそれらを燃やし、その灰を稲田にまいて新たな年の豊かな実りを願うことと非常によく似ています。生命を支えてくれる作物を重んじ、穀物霊を敬う心情は、宗教の違いをこえて、通じ合うものなのではないかと思われます。
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●そんなわけで、当館の「世界のクリスマス展」でも、各地の麦わら細工をご紹介しています。なかでも天使をかたどった麦わら細工は造形的にとても美しく、筆者・尾崎がとくに麦わらの天使が好きなので、クリスマス前のワークショップでは、バリエーションを違えて、度々、取り上げてきました。ご要望によって、ここでは、「光をいただく麦わらの天使」の作り方をご紹介いたします。
*アメリカ合衆国・シアトル/1993年製 *オーストリア・バルトピアト/1999年製 *メキシコ・チンツンツァン/1980年代製
<光をいただく麦わらの天使>の作り方ご紹介
*準備するもの……………長い麦わら20本ほど(半日ほど水に浸しておく)、
木綿糸(白か赤)、リボン(細いもの)
*道具………………………はさみ、縫い針(長いもの)
*作り方
<天使の翼を作る>
❶10~12mほどに切りそろえた麦わらを5~6本、机の上にならべます。
❷真ん中に縫い針を立てて、針が入った箇所を上下から指で挟み、しっかりと押さえて、下記の画像のように結びとめます。このとき、天使の翼がチョウのはねのように広がるよう、できるだけきつくしばってください。
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<天使の頭上の光を作る>
❸5~6cmほどに切りそろえた麦わらを4~5本、机の上にならべます。
❹天使の翼を作ったのと同じ要領で、真ん中に針を立て、チョウのはねのように広がるよう、しっかりしばります。
❺糸を二本どりにして、結び目から1cmほどのところに針をさし、隣の麦わら、その隣の麦わら、またその隣の麦わらへと縫いつなぎ、左右の翼を円形にかたちづくっていきます。
❻最初に針をさしたところまで戻ってくると、二本どりにした糸を10cmほど残して針から切り落とします。
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❼二本どりにした糸を1本ずつにわけ、それぞれの糸を編んで、光の形を整えます。
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<天使の胴を作って組み立てる>
❽17~18cmほどに切りそろえた麦わらを11~13本ほど用意し、根元から0.8~1.0cmぐらいのところを下の画像のようにしっかり結びます。
❾結び目を基点にして、結び目を隠すように1本ずつ下方へ折り返していきます。このとき、光をさす麦わらを1本残しておいてください。
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❿折り返した先から1.5cmほどの位置を木綿糸で結びとめて頭部を作ります。
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⓫首の下、麦わらの中に翼を差し入れ、また、胸の部分に太目の1本(腕になります)の麦わらをさし入れて形を整えます。
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⓬腰を木綿糸でしっかりまとめて結び、スカートを開き、差し入れた1本の麦わらを画像のように折り、手を合わせているように形作って結びとめます。
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<完成させる>
⓭天使の頭上に残していた麦わらの長さを調節して、光をさします。
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⓮腰にリボンをチョウ結びし、頭部に木綿糸をとおし、つるし飾れるように整えれば、完成です。光や天使の翼の先を斜めにカットすると、美しく仕上がります。
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●麦わらが入手できるようでしたら、ぜひ、お作りになってみてください。麦わらが乾くと、つやつやと美しく輝きます。手作りのオーナメントで心楽しいクリスマス・アドベントをお過ごしくださいませ。
(学芸員・尾崎 織女)
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