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学芸室から 2021.08.09

月遅れの七夕風景~当館ランプの家・姫路市大塩町・高砂市曽根町の旧入江家住宅~

月遅れの七夕を皆さまはいかがお過ごしでしたか?――当館では8月5日、ランプの家の床に淡島寒月翁の七夕の掛け軸と❝京都の七夕さん❞、縁側には今年も市川沿岸沿いの村々に点在して伝わる七夕飾りを立てました。ささやかですが、伝承の七夕飾りのある風景をご来館者の皆さんのご記憶に留めていただきたく! さっそく、「兵庫県下、郷土の品々を調べる」という課題に取り組んでいる西宮市の小学生がご家族と来館され、❝七夕さんの着物❞と❝対の野菜❞をつるす播磨地方の七夕飾りについて、「七夕さんにお供えするのは、着るものが増えるのと秋の実りを祈るという両方の意味があるのかな」などと話しながら一生懸命にメモを取り、風景を写真に収めていかれました。
ご来館の皆さんに書いていただいた短冊には、今年も“コロナ禍が去りますように…”という文言が多く見られました。播磨地方はあいにくの曇り空で天の川の織女星と牽牛星(ベガとアルタイル)は見えなかったのですが、どうか私たちの願いが聞き届けられますように。

<ランプの家の七夕飾り>



さて、当館の七夕は館長たちにお任せをして、私は姫路市大塩町と高砂市曽根へお邪魔しておりました。先のブログ「学芸室から」でもご紹介したように、姫路市大塩町の<大きな縁(塩)のまちづくり実行委員会>の皆さんは、今夏「七夕さんの着物」のある七夕飾り復活への取り組みに着手され、一方、お隣町の高砂市曽根町では、教育委員会と町の皆さんが子どもたちと一緒に準備された伝承の七夕飾りを旧入江家住宅に展示する試みを始められました。

<姫路市大塩町の七夕飾り>
大塩町では、8月5日に山陽電鉄大塩駅前と公民館前に七夕飾りを立て、七夕の歴史と地域での伝承ついて紹介するパネルなども設置されました。8月6日は、近くの藪から切り出した笹竹と「七夕さんの着物作りのセット」(先着200名)の配布作業が行われました。町の方々を中心に、ご希望者が次々にいらっしゃり、実行委員会の皆さんは笹運びのお手伝いへ。町のご高齢の方々は「ああ、懐かしいなぁ…」と目を細めながら、若い方々は作り方の説明を受けながら、いい笑顔で受け取っていかれます。翌日は、配布を受けたものに柴田提灯店製の袴型着物などもプラスして、あちらこちらの家庭に七夕飾りが立ちました。

<高砂市曽根町・旧入江家住宅の七夕飾り>
8月7日は、大塩の皆さんと一緒に高砂市曽根町の「旧入江家住宅(兵庫県指定重要有形文化財)」へ向かいました。入道雲が沸き立つ夏空のもと、風格ある旧入江家の前にはさやさやとした七夕飾りが立ち、教育委員会のご担当者と地元婦人会の方々が笑顔で出迎えてくださいました。中庭にも曽根小学校の3、4年生の手で製作された可愛らしい「七夕さんの着物」がゆれています。曽根町の七夕飾りは日盛りのなか、目にも涼しげで立秋の日の風情があふれていました。三々五々、訪れる方々には懐かしそうに昔を語られるご婦人もあり、「うわぁ、きれいねぇ~」と目を細めておられるご夫婦もあり、明治・大正時代さながらの風景は皆さんの目に強く焼き付いたことでしょう。


かつて当たり前のように身近にあった四季折々の生活文化、切れてしまいそうになったその伝承の糸を丁寧に繕って、次の世代に結ぶ活動に取り組んでおられる二つの町の方々が、額から流れる汗を日盛りの太陽にきらきら輝かせておられる姿、マスクを通しても伝わってくる明るい笑顔を尊いものと感じました。―――笹を切ったり、飾りを立てたり、皆さんに配ったり、という作業のお手伝いは何もできませんでしたが、伝承についてのお話やパネル製作などを通してお仲間に加えていただき、また親しくお声がけいただけたことがとても嬉しく、こうした節句文化復興をテーマに町の輪(和)を広げていくような活動について、またお手伝いができればと想います。

(学芸員・尾崎 織女)

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