日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2020.01.05

謹賀新年 

新年あけましておめでとうございます。
関西地方は平年より暖かさを感じた三が日でした。皆さまには健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます 。
本年も日本玩具博物館をどうぞよろしくお願いいたします。


さて、2号館では、恒例の干支の企画展「ねずみのおもちゃ」を開催しています。展示品の多くは土人形や張り子、からくり仕掛けのねずみたちで 昭和初期~昭和40年代にかけて制作された郷土玩具が中心ですが、今年の子年にむけて作られた令和元年作の資料も3点ご紹介しています。「とやま土人形 小槌のりねずみ土鈴」、「干支神戸人形・子」、「十二支のびっくり箱・子」です。

  

とやま土人形「小槌のりねずみ土鈴」

とやま土人形は、嘉永年間(1848~1854)に、富山十代藩主前田利保が名古屋の陶工、加藤家の陶器職人であった広瀬秀信を富山によび、千歳御殿に窯を築いたところに始まる土人形の産地です。 江戸末期以降、 代表的な 「天神」「抱き雛」 をはじめ縁起物や玩具として数多く作られてきました。しかし、昭和中頃になると土人形屋は広瀬家より技法を学んだ渡辺家だけとなります。1983年より、富山市は渡辺信秀氏を講師として「とやま土人形伝承会」を1997年以降は、型・技法全ての仕事を伝承会に託し、現在は「とやま人形伝承会」が渡辺家の後を受け継いで伝統技法を後世に伝えるため、活動しています。現在20人ほどの会員によって構成され、日々制作とともに普及にも努めていらっしゃいます。

富山県こどもみらい館への貸出協力で11月に展示設営のお手伝いに行かせていただいた際、帰りに富山市民族民芸村にある「とやま土人形伝承会」の活動拠点「とやま人形工房」を訪ねました。土人形の販売を兼ねた店内には、伝統的な型や、古い成形物、とやま土人形の紹介とともに、現在制作途中の成形物や絵付け前の乾燥中のものなども展示されています。奥に工房があり、この日も絵付け体験を指導されている方、制作に勤しむ方と様子を拝見しました。


11月にはすでに干支にちなんだねずみの土人形や土鈴が並ぶ中、2匹のねずみがよりそって小槌にのっている土鈴を求めました。 金粉が施された黄金の稲穂が描かれた小槌のおめでたさと、ねずみの表情がかわいらしい土鈴です。

土鈴のねずみ

「干支神戸人形・子」

神戸在住の神戸人形作家、吉田太郎氏が十二支をモチーフに作り始めた干支神戸人形、戌、亥に続き子です。つまみをまわすと、裃を粋に着こなした小さなねずみくんが、大きな杯をぐいと持ち上げ口元へと運びます (ちなみに今年原田家のお屠蘇は山口県の日本酒「原田」でいただきました) 。 歴代の神戸人形作家にも引き継がれてきた酒飲みや、着物姿の神戸人形も思わせる干支神戸人形・子もめでたくも楽しい神戸人形です。 木材の切り出しから、細かい部品加工まで詳しい製作過程は、ウズモリ屋さん公式の「ウズモリ屋の神戸人形ブログ」に書かかれていますので、こちらもぜひご覧ください!

干支神戸人形・子は吉田さんご夫妻のご厚意により、寄贈いただき、展示させていただいています。また、ミュージアムショップでも数量限定でお分けしておりますので、お早めにお求めくださいませ!

「 十二支の動物びっくり箱・子」

岡山県美作市の工房で、からくりおもちゃや時計を制作をされている若林孝典氏が十二支の動物たちをモチーフに作られるかわいいびっくり箱です。クリスマスの時期、毎年当館にお届けくださいます。箱の上に、それぞれの動物の好物や関わりのある食べ物が、、、箱をスライドさせると中からしゅっと動物が飛び出してくる仕掛けです。今年の主役ねずみが狙うのはチーズです^^


同じく展示している江戸のおもちゃ絵本『江都二色』(安永2年)にも描かれているからくり玩具「猫とねずみ」のしかけとも共通する部分があり、古今東西子どもたちに楽しまれてきているからくり玩具だということもわかりますね!

続けられてきたものが、時代や環境、素材の変化などいろいろな要素が原因でとなってなくなってしまったり、途絶えそうになったりしていることは、玩具の世界だけに限ったことではありません。けれどその精神や伝統、楽しみに共感し、ときに葛藤しながらも意思をもって作っている現代の作り手さんの玩具や作品も当館の展示を通して知っていただけると嬉しく思います。

1年で一番干支を意識するのは年末年始で、一ヶ月、三か月、半年とすぎると、あれ?今年の干支って。。。なんて思ったりもしますが、今年は手帳の表紙にねずみが描かれているので、見るたびに小さいながらも十二支の始まりのねずみに力をもらえそうです。

(学芸員・原田悠里)

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