日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2018.09.28

海外からのお客さま~イスラエルの玩具デザイナー~

風の中に金木犀のかぐわしい香が漂う頃となりました。台風24号の襲来が心配される週末、どうか大型の強い台風がもたらす被害が少しでも小さいものでありますように……。

さて、先日のことです。4号館の常設展示室で興味津々、宮崎の「鶉車」に見入る二人の来館者がありました。―――  話しかけると、イスラエルからの旅行者でした。

日本の郷土玩具の展示コーナーをご案内しました

熊本や福岡の「雉子車」のシンプルで特徴をよくとらえた造形が素晴らしいと感嘆されるので、郷土玩具が日本近世の造形を受け継ぐものであることなどを文献などお見せしながらご案内したのですが、お二人は世界の玩具文化に対して非常に造詣が深い―――。驚いて理由をお訊ねしたら、そのうちのお一人は玩具のデザイナーだったのです。

江戸時代後期の玩具絵本『江都二色』をご紹介。250年近く前の日本の玩具の姿に興味津々。
すばらしい!と気に入っておられた郷土玩具の数々

今回、彼らの来日の目的のひとつは「神戸人形」に出合うこと――――ネット上で神戸人形のからくりをご覧になり、本物をぜひ  手にしたいと日本玩具博物館を訪ねてこられたのでした。その魅力について訊いてみると、繊細でぶれのないからくり、小さな世界にファンタジーが詰まっていること――そんなふうに話されました。現在の神戸人形作家に会いたいとおっしゃるので、神戸市東灘区で神戸人形作りを続けておられるウズモリ屋・吉田太郎さんの工房をご紹介し、佳き日のご訪問が叶いました。玩具づくりに携わっておられるデザイナー、あるいはクラフトマン同士、お心が通じ合う素晴らしいめぐり合いになったようです。

神戸人形を動かしてみるお二人。本当に楽しそうです!

何もかもが刺激的だと興奮気味のお二人―――資料を囲んで世界各地の方々が出合い、また旅立っていく博物館の展示室は、駅のプラットホームのようだと感じました。

今朝は、メールボックスを開けると、イスラエルに帰国されたShlomiさんからのお便りを受信しました。「日本の伝統的な玩具と現代的な玩具、その両方がどこかでつながっていると感じ、またそれらから自らが制作にあたる上での多くのインスピレーションを得ることができました。日本玩具博物館のコレクションは原初的で基本的な玩具の世界を現代へと橋渡しする大きな役割をもっていると感じました。」と。

井上館長と記念撮影

Shlomi Eigerさん――ホームページ<Shlomieiger.com>のギャラリーでは、彼のおもちゃ作りに対する優しい感性に触れることが出来ます。

Shlomi Eigerさんのデザイン画

この素晴らしい出会いがまた日本玩具博物館と彼の地の玩具文化とを結ぶかけはしとなりますように…。

(学芸員・尾崎織女)


<後記>
新春、Shlomi Eigerさんから贈りものが届きました。ご自身デザインされたおもちゃで、イスラエルの玩具会社Halilitに依頼されて作られた”Sounds of Nature” シリーズのひとつなのだそうです。フクロウの背中が吹き口になっていて吹くとホーホーと鳴き、モンキーの頭を押さえるとキーキーと鳴き、カエルを転がすとゲロゲロと鳴き声を立てます。

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