日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2019.08.29

夏休みおもちゃづくり教室やサントリ―地域文化賞のことなど

夏休みもまもなく終わりです。暑さに負けずに来館くださった大勢の子供たちで、この夏も賑わいました。1号館で開催中の「平成おもちゃ文化史」展は、小さな子供たちにも大人気です。親子共々に「懐かしい」の言葉を連発されている姿を目にして私自身も驚いています。展示は11月12日で終了することになっていましたが好評のため、当分の間、展示を継続することになりました。

6号館の「日本と世界のままごと道具」展もすべてが当館所蔵資料による特別展です。他館では見ることができない珍しい展示であり、来館者から感動の言葉が寄せられています。世界各地のままごと道具も、収集した時期が1977年~2000年過ぎまででした。現在では生産されていないものが多く、収集不可能なものが多数展示されています。
日本国内のものは明治から現代のものが年代を追って展示され、中でも、明治期から昭和初期頃まで京阪神の裕福な家庭で雛祭りに雛段の前に飾られ、遊ぶこともできた勝手道具の数々が大人気です。12組もの資料が並んでいますがこれらは阪神淡路大震災後に当館が寄贈いただいた資料です。文化財として認知されることはなく、当館が受け入れていなければ、失われていた資料でした。

雛の勝手道具(明治末~大正時代製)

今年の「夏休みおもちゃ教室」は、江戸時代に流行したからくりおもちゃを作りました。江戸時代のものを忠実に再現するのではなく、身近にある材料で、江戸時代からのからくり仕掛けの原理を応用した楽しいおもちゃの数々を作りましたが、現代っ子もその不思議な動きに大喜びでした。私は「鯉の滝登り」と「剣術人形」を教えましたが、素晴らしい作品を作ってくれました。

過日、サントリー文化財団から、9月27日に東京で開催される第41回サントリー地域文化賞の贈呈式と記念パーティーの案内が届きました。同賞は地域の文化向上に貢献した団体や個人を顕彰するために同財団が1979年に創設しました。毎年、全国から5組の団体や個人が選ばれますが、当館は1998年に受賞しました。副賞として200万円もの大金を頂き、当館はその賞金で翌年にこの当館HPを立ち上げることができたのです。
昨年の第40回までに受賞した団体や個人は214件ですが、博物館・美術館で受賞したのは全国で7館と少数です。1982年に日本はきもの博物館(広島)、83年に国際染織美術館・木内綾(北海道)、84年に四国民家博物館(香川)、85年に夢二郷土美術館(岡山)、98年に日本玩具博物館(兵庫)とアマゾン資料館・山口吉彦(山形)、2000年に高畠華宵大正ロマン館(愛媛)が受賞しています。しかし、その功績から高い評価を受けた受賞館が近年の入館者数の大きな減少から財政難になり、2013年に日本はきもの博物館、2014年にアマゾン資料館、2016年には国際染織美術館と3館もが閉館しました。高畠華宵大正ロマン館も入館者が激減しているとの情報があり、同館に問い合わせると周辺の観光施設が工業団地に変わり、開館当時、年間7万人もあった入館者が数千人に激減。厳しい状況になり、本年から土・日のみの開館になったとの返事がありました。
公立館には膨大な公金が投入されているのに、貴重な資料を所蔵する民間の館に、なぜ国や自治体などから支援がないのでしょうか。海外からの来館者に事情を話すと、日本は経済大国なのにどうしてと不思議がられます。

(館長・井上重義)

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