うれしい再会・その1  | 日本玩具博物館

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学芸室から 2013.08.21

うれしい再会・その1 

酷暑お見舞い申しあげます。立秋を過ぎ、旧盆も過ぎていこうかというのに、猛々しい暑さの日々が続いております。皆様、お元気でお過ごしでしょうか。玩具博物館では夏休みの玩具講座などの予定を終え、館内には晩夏の匂いが漂い始 めました。

先週は、中国の民間玩具展開催を記念してワークショップを開きました。剪紙作家の上河内美和さんを講師にお迎えし、中国の農村に伝承されてきた切り紙細工「剪紙」の世界を体験するものでした。参加者は、今回なぜか、中国民間工芸についても中国文化についても造詣の深い方々ばかり。皆さんが楽しんでおられることは、そのまなざしの真剣さと時折、口元に浮かぶ微笑みを見ていると、本当によくわかりました。伝統的なデザインには独特の美しさがありますが、先生の同じ型紙をいただいても、それぞれに少しずつ味わいが異なり、皆さんの作品を見ていて、それがとても面白かったです。

最後まで残って下さった皆さんと記念撮影

ハサミのあつかい方、基本的な切り方の手ほどきを受けた後、初心者でも順を追って丁寧にハサミを動かしていれば、最後には自然に複雑な大作を仕上げることができるよう、上河内先生は、上手にプログラムを組んで下さり、皆さん、最後まで夢中になって紙とハサミの世界を楽しんでおられるご様子でした。

開催中の『中国の民間玩具展』に寄せて、上河内先生は「ザクロを持つ娃娃」の型紙を用意して下さっていました。とても難しいデザインだったと思われますが、ご参加の方々の多くは、いくつかある中からこれに挑戦し、それぞれに素敵な作品を仕上げていかれました。ワークショップの後、幾人もの方々から、「帰ってから額装してみた」とか、「新しい作品に挑戦してみた」とか、画像つきで嬉しいお便りをいただきました。

私が上河内美和さんに初めて出会ったのは、2009年秋のこと。芦屋市にあるカフェ&ギャラリーで個展を開かれた折、少人数のワークショップをもたれたのですが、そこに友人と参加させていただき、剪紙の楽しさとワークショップの進め方のうまさに感嘆しました。
その時に教えていただいたことに、“自らの生活を愛さなければよい作品は生まれない”という上河内先生の中国のご師匠の言葉があります。暮らしの中の造形物は、仕事や家事や子育てや……繰り返す日常を大切にする人の手から生み出されてくるものなのですね! その心を大切にしておられる上河内さんの剪紙は、繊細さの中にたっぷりとして大らかな感情が感じられます。

上河内美和さんをいつか日本玩具博物館へお招きしたいと願っていたことが、今回実現できました。剪紙への愛情とその世界を伝えていくための細やかな心くばり、受講生それぞれに対する敬意に満ちた接し方も初めてお会いした時のまま。素晴らしい方と玩具博物館のご縁を結ぶことが出来、とてもうれしく思っています。

(学芸員・尾崎織女)

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