夏のままごと遊び | 日本玩具博物館

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学芸室から 2013.07.21

夏のままごと遊び

今日は、明石の公民館からたくさんの子どもたちの入館があり、朝から賑やかでした。6号館の「中国民間玩具展」会場で解説会を開いた後、庭に出てみると、公民館ボランティアの方がロウバイの木の陰にカブトムシを見つけ、子どもたちが群がって見ていました。近くのクヌギやアベマキの林にはよく居るのですが、館の庭で見たのは初めてです。いつの時代も、子どもたち、とくに男の子が大好きなカブトムシ! 久しぶりにじっくり眺めると、確かにかっこいい。夏休みのシンボルみたいな甲虫ですね。「楽しかったな。またお母さんに連れて来てもらいたいな。」と言いながらバスに乗り込んでいく子どもたちを見送りながら、ああ、夏休みが始まったなと懐かしい匂いの夏風に吹かれました。

蠟梅の木にカブトムシ!

ところで、皆さまは虫をテーマにした玩具は多く作られていると思われますか? 時々、「虫の玩具を集めて何かできないでしょうか」とご相談を受けることがあるのですが、バッタやテントウムシ、チョウなどを模した木製玩具がヨーロッパに少し、コオロギの鳴き声を模したものが中国に少し、椰子や棕櫚の葉で編んで作った虫がアジア各地に少しあるぐらいで、日本の郷土玩具の世界にカブトムシもバッタもチョウもおらず、昆虫をテーマにしたものは皆無といっていいぐらいです。身近にいるにもかかわらず、ヘビやトカゲ、カメ、また他の動物に比べて、虫の玩具が極端に少ないのはなぜでしょうか。各地の虫をめぐる文化と関連付けて考えるべきでしょうけれど、ひとつには、掌より小さな虫は、子どもにとってそれ自体が生きている玩具のようなものであり続けているからかもしれません。館の庭でカブトムシの角を引っ張ったり、腕にとまらせたりして可愛がっている男の子を見ながらそう思いました。

松脂をつけた切り出し弦をこすって鳴かせる虫のおもちゃ(中国)――虫のおもちゃはあるにはありますが・・・。

  

1号館の「日本と世界のままごと道具展」は、幅広い年齢層に好評をいただいております。今回、この企画展の開催をチャンスとして、ご来館の方々に、懐かしいままごと遊びについてお話を伺いたく、時々、単独インタビューを試みております。陶器やブリキのままごと道具をつかった野外遊び思い出を語って下さる方々、“ママレンジ”や“ママクッキー”などのクッキングトーイを買ってもらえず悲しかったと熱く話して下さる方々、「これと同じままごと道具を持っていた!」と懐かしげな方々、そして草花を使った見立て遊びについて話して下さる方々。皆さま、たくさん話して下さり、ありがとうございます。


私自身が懐かしく思い出すのは、野原のままごと遊びです。春は春の草花、夏は夏の草花、秋はたくさんの木の実を使って・・・・。蓮や柿の葉を大皿や小皿に、土や花、木の実などを盛りつけておかずに見立てたり、白い花に色とりどりの花びらをふりかけて“ちらし寿司”、花の蕾にカンゾウやミョウガの葉をくるくる巻きつけて“巻き寿司”に見立てたり、中に小さな石ころを入れ、笹の葉を三角に折りたたんで“笹飴”、朝顔やツユクサなどの花をしぼって色水(“蜜”といいました)・・・・・、そのようなものをいろいろ作ってまねごとの食卓を作っていました。古代、蓮や柿の葉は銘々皿だったという説があるぐらいですから、古代人の食卓を遊びの中で再現しているようなものだったのかもしれません。

夏の草花を使ったままごと遊び

玩具博物館の周りにはさまざまな花木が植わっているので、春夏秋冬、草花遊びには不自由しない環境です。子ども時代を思い出しつつ、近所の女の子を誘ったりして、野原のままごと遊びを再現してみました。何を何に見たてようかとあたりを探して歩くと、普段、見ているようで見ていない夏の草木の営みがしっかりと目に映りました。まるで青柿のようなツバキの実やエゴの木の萌黄色の小さな実、ウツギの青く小さな実、ヤマブキの黒い綺麗な種・・・・・彩りのなんと美しいことでしょう! それは、ワクワク楽しくなる発見で、自然に一歩踏み込み、目をこらして対象物を観察できる、という野原遊びの効用をひとつ知りました。皆様の暮らされるところが、草木の豊かなところであれば、子どもたちを誘って、ぜひ、野原のままごとを楽しんでみて下さい。

(学芸員・尾崎織女)

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