日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2010.04.22

企画展「ふるさとの武者人形」と特別展「子どもの晴れ着とちりめん細工」が同時オープン。

いま当館の周辺は遅咲き桜が満開です。入り口にある八重桜(関山)は満開を過ぎて花吹雪の状況ですが、駐車場周辺の霞桜が満開で来館者の目を楽しませています。当館館内や周辺の桜は4月下旬に咲く遅咲きが多く約10本もあります。これらは20数年前に日本花の会から寄贈いただいた苗木が大きく成長したのです。もうしばらくは遅咲きの桜を楽しんでいただけるでしょう。庭も椿の季節は終わりましたがシャガや白山吹の花が満開です。
佐野美術館の「ちりめん細工の世界」は去る5日で終わりましたが、尾崎学芸員が「学芸室から」で報告しているように予想通りの大盛況でした。

当館の1号館企画展と6号館特別展はいつも少し時期をずらしてオープンするのですが、手違いでこの24日に同時オープンと発表したことから2つの館での展示作業が重なり、この10日間は多忙な毎日でした。昨夜1号館の「ふるさとの武者人形」の展示作業が終わりやっとひと息つきましたが、その間に3号館のちりめん細工の常設展示コーナーも当館ちりめん細工研究会所属会員の出品による「傘飾りと吊るし飾り展」に換える展示作業を行い、3つの館での入れ替え作業がありました。しかし私にはこの後も大仕事が残っています。収蔵庫外に積み上げられた膨大な数の段ボール箱を運び込む作業で、パズルのように組み上げ積み上げて収蔵庫にしまいます。

3館の展示はともに初公開の資料が多く、喜んでいただける展示になりました。とりわけ6号館の「子どもの晴れ着とちりめん細工」の子どもの晴れ着は、この20年間重点をおいて蒐集してきた資料のひとつで、約100着を所蔵していますがその半数を展示しました。ちりめん細工の古作も初公開のものが多く、先日から公開していますが来館者からは感動の言葉が聞かれます。
1号館の「ふるさとの武者人形」の展示の中心は土人形です。武者人形が100体を超え、後は金太郎や虎などで合計約300点です。このように土人形が1号館でまとまって展示されるのは16年ぶりです。3号館のちりめん細工の傘飾りや吊るし飾りの展示も、それぞれに工夫を凝らしたり意表をついた作品が多く皆様に喜ばれるでしょう。

私は開館以来「博物館の使命は失われ行く文化遺産を蒐集保存し、後世に伝えることにある」として当館ならではのコレクション形成を図ってきました。私たちの姿勢が信頼と評価を受けるのか、今年に入ってからも貴重な資料の寄贈が相次いでいます。岐阜県一宮市の米津さんから長年に亘り蒐集されてきた大型のきりばめ細工の袋物19点の寄贈を受け、大阪の能勢泰明さんのご遺族からも大正から昭和初期の絵葉書や土人形などの寄贈を再度受けました。いずれも今回の企画展と特別展とにかかわる資料でもあり、早速に展示させていただきました。雛人形や端午の節句に係わる資料も継続してコレクションの充実を図っており、昭和初期の豪華な座敷幟などを入手しましたが増え続ける資料で収蔵庫がパンク状態でその対策が大きな課題です。

朝日新聞で4月18日から始まった連載企画「文化変調」は全国の博物館の現状を取り上げて興味津々ですが、文化遺産を蒐集し守るために作られたはずの博物館が財政難という現実に直面して続々と閉館になっている状況が報告されています。
「乱立の末博物館重荷」と見出しにありましたが、現在の博物館冬の時代を招いた責任のひとつは、特色ある資料も持たずコレクションも充実させないで安易にハコを乱立させた自治体にもあるのではないでしょうか。博物館や美術館の歴史を辿っていただくと分かることですが、自治体が設立する以前に、各地で民間の博物館や美術館が設立されていました。民間といえば営利のために活動しているという見方がされがちですが、私同様に文化遺産を守るという使命感を持ち、資料を蒐集し自治体に先駆けて博物館や美術館を設立したところが多いのです。しかしそれらに対する支援や連携が無いなかで多くが閉館の途を辿り,貴重な文化遺産が散逸した例をいくつも見てきました。自治体も豪華なハコを次々に建設しましたが厳しい状況下にあります。貴重な資料を持つ民間の博物館と自治体とが連携をして、中身の充実した魅力的な博物館が何故造れなかったのでしょうか。

(館長・井上重義)

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