日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2010.11.07

新春の企画展準備中~12年ぶりの兎たち~   

日本玩具博物館では毎年、11月になると、新春の企画展の準備を始めます。テーマは、お正月の遊戯だったり、新年の干支の動物だったり…と年ごとに異なりますが、年賀状の図案を探して来館される方々が増える時期でもありますので、秋の企画展を急いで片づけて、早く緋毛氈を敷き詰めなくては…と少々焦る気持ちで日々を過ごしています。

出番を待つ兎の郷土玩具


今回は、平成23・2011年の干支「辛卯(かのとう)」を祝って、兎の郷土玩具と、兎が軽く“飛び跳ねる”ことにつなげて、羽子板をたくさん展示しようと準備を進めています。昨夜は、収蔵庫から兎の郷土玩具を取り出しました。12年の長い眠りから覚め、薄暗い部屋を出た兎たちは、心なしか、まぶしそうに学芸室の机の上に並びました。本日は、干支の玩具の登場を心待ちにして下さっている方々から、「早く兎がみたい」と、お電話を頂戴しましたので、展示に先立って、出品予定の兎の郷土玩具について、ご紹介したいと思います。

日本の山野には、北海道のユキウサギとエゾナキウサギ、本州・四国・九州のノウサギ、奄美大島と徳之島のアマミノクロウサギ、主に、それら四種類が棲息しているそうです。里山を駆けまわる野兎は、農作物を荒らすものとして駆除の対象とされ、また、兎肉は、かつて牛馬の肉食をタブーとした日本人にとって、大切なタンパク源でもありました。こうした理由もあってか、兎は豊かさのシンボルとも考えられてきたようです。そして、卯(=兎)は、その姿形のかわいらしさと ユニークさから、絵画や工芸の意匠としても愛され、江戸時代後期になると、郷土玩具の題材としてもとりあげられるようになります。今回の展覧会では、兎の造形に着目し、「兎~豊かさと吉祥のシンボル~」「兎と伝説」「動く兎の玩具」の項目で展示します。

展示パネル作成中


さて、兎の郷土玩具の中には、伝説や物語を題材にしたものが目立ちます。それは、「因幡の白兎」「足柄山の金太郎」「カチカチ山」などの子どもたちに親しまれている昔話だったり、“月には兎が住んでいて、餅をついている”という伝説だったり、また謡曲「竹生島」に歌われる“波兎”の景色だったり…。伝説をみると、兎は弱い動物でありながら、賢く、また未来を予言する能力をもつと考えられていたことがわかります。古来、白い動物は瑞兆(ずいちょう=良いことが起こる前兆)であると信じられていたことと、白兎が愛されたこととは関係があるのかもしれません。

「月には兎がすんでいる」という伝説をもつ国や民族は珍しくないといいます。中国の子どもたちに尋ねると、不死の仙薬を王さまから盗んで月へと逃げた嫦娥(じょうが)に仕えて、「月の兎が薬をついている」と教えてくれます。中国では薬のところが、日本に伝承されて、餅になったのでしょうか。

丸くなった兎の姿「玉兎」は、月そのものの象徴であり、満ち欠けを繰り返す月の姿は、女性の象徴でもありました。東京の郷土玩具、今戸焼の「月見兎」は、女性の“月のモノ”が正常でありますように…と願って、女性たちが買い求めました。月と兎と女性とのつながりがみえる郷土玩具のひとつです。


このように、郷土玩具の色や形、背景に広がる物語を通して、私たちの祖先が兎という動物に何を感じ、何を想い、どんな願いを託してきたのかが見えてくるようです。新春らしい企画展「干支のうさぎと羽子板」展は11月27日から。新収蔵の羽子板もたくさん登場します。どうぞご期待下さい。(尾崎織女)

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