日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2010.02.08

佐野美術館の「ちりめん細工の世界」展準備完了!

来る2月20日より、日本玩具博物館のちりめん細工コレクションが勢揃いする展覧会が、静岡県三島市にある佐野美術館で開かれます。ここ数年間にわたり、当館では、「ちりめん細工の世界」と題する展覧会を、各地で開催してきました。2006年夏の京阪百貨店ギャラリー(大阪府守口市)、2007年春のたばこと塩の博物館(東京都渋谷)、同年秋の日本絹の里(群馬県高崎市)、2008年冬の小倉城庭園(福岡県北九州市)と続き、2009年初夏の日本絹の里では再び、企画を変えて展示会を持ちました。各地でご好評をいただき、私たち自身も、展覧会の度、「ちりめん細工」という手芸に対する理解を深められること、ありがたく思っています。

今回、展示させていただく佐野美術館は、日本刀、青銅器、陶磁器、能面、絵画、書などの美術工芸品を所蔵展示する老舗の私立美術館です。普段は、絵画や書、日本刀の名品がしっとりと収まる企画展示室に、この春は、当館のちりめん細工コレクションをずらりと並べ (600点の展示を予定しています)、三章仕立てで日本の伝統手芸の世界をご紹介してまいります。

第一章「江戸と明治のちりめん細工」では、江戸時代後期、上流階級や大都市部の富裕な人々の間で作られ使用された「ちりめんのお細工物」について、また、それが明治時代に入り、女学校の教材として受け継がれていく様子を当時の作品群を通してご紹介し、「用と美の袋物」「花と鳥・動物の小袋」「魔よけと招福の巾着」「遊び心の小箱や懐中物」などのグループにわけて、その製作目的や使用目的、意味について考えていきます。


第二章「よみがえったちりめん細工」では、当館が古作品や文献の蒐集を行い、それらの復元作業を通して誕生した平成時代のちりめん細工作品を、春夏秋冬、四季の彩りの中でご紹介します。また、現在の暮らしの中でちりめん細工を楽しむ提案のひとつとして、井上館長の指揮のもと、「日本玩具博物館ちりめん細工の会」のメンバー約150名が協働で作り上げた華やかな「ちりめん細工の傘飾り」もずらり、ご紹介いたします。

そして第三章「子どもの着物と子育てのお細工物」では、初宮参りや節句や祭礼、成長儀礼の折に身につける着物や帽子や涎掛け、また子どもの無事成長を祈って製作された守り袋(巾着)や、人形袋、迷子札など、親たちの愛情が伝わる造形の色々をまとめてご紹介したいと思っています。

新春より、私たちは準備室の一角にこもって作業に明け暮れておりました。佐野美術館の展示ケースに合わせてシミュレーション展示をしたうえで、展示品を決定し、梱包し、パッキングし、説明パネルやキャプションなどを製作する一方、小さな展示台(大小300個以上!)などを用意していくのですが、それらに加え、細かな作業は数限りなくあるのです。すべての準備が完了し、発送手配も済ませましたので、あとは、展示作業に出向くだけの手はずとなりました。2月17日から井上館長、笹竹学芸員とともに出張し、先方の学芸スタッフの皆さんと一緒に、楽しく温かなムードの展示を完成させたいと思っています。

出品&展示シミュレーション風景
展示台作り

折りしも、雛祭りの季節。佐野美術館の一室では、ちりめん細工の展示期間、享保雛をはじめ麗しいお雛さまの数々が展示されますし、同じ静岡県伊豆の稲取に足をのばせば、「つるし雛」が賑やかに飾られていることでしょう。
お近くの方は是非、そしてご遠方の方々には雛巡りの旅を兼ねて、どうぞ三島の佐野美術館をお訪ね下さいませ。展覧会期は2月20日から4月5日まで。休館日は毎週木曜です。

(学芸員・尾崎織女)

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