秋の庭に響く音色♪   | 日本玩具博物館

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学芸室から 2005.11.15

秋の庭に響く音色♪  

♪●日本玩具博物館には「ランプの家」と名付けた古民家風の建物があり、館長が好きな草木を集めて造った里山のような中庭に面しています。普段は来館される方々に、桜湯など飲みながらくつろいでいただく場所なのですが、時には玩具作りや伝承会の教室になり、ギャラリーにもなり、海外からのお客さまをお迎えする折には囲炉裏のあるゲストハウスになり、また季節ごとの企画展に関連した演奏会やワークショップを開く会場にもなるのです。

♪●この秋は、1号館で行った企画展「アフリカのおもちゃと造形」に、アフリカ各地の民族楽器を数多く展示したことから、特徴ある打楽器や弦楽器を選んで、その音色とリズムを楽しむ演奏会を開きました。

♪●1回目は「親指ピアノ・ムビラの音色」。ムビラはジンバブエに住むショナ族が14世紀の頃から伝承する民族楽器です。祭礼の時に祖先の霊や精霊と交信するために演奏される神聖なもので、日本では「親指ピアノ」の名前で知られています。10月30日は爽やかな快晴。篠山市在住の陶芸家・中村由紀子さんが本場で学んでこられた伝統楽曲を、仲間の皆さんと5台のムビラを使って演奏して下さいました。60名ほどの鑑賞者は皆、建具を取り払ったランプの家から、舞台となった庭を見つめ、色づき始めた木々と秋風の中、ムビラのやさしく涼やかな音色に心を解き放たれたような表情でした。

♪●2回目は「西アフリカの太鼓・ジャンベとドゥンドゥンの響き」。
ジャンベは、マリ・ギニア・ブルキナファソ・セネガル・コートジボアールなどの西アフリカ地域特有のゴブレット型片面太鼓で、マディング族が伝えてきたものといわれています。木をくり貫いた胴に山羊皮を張って作り、紐で首、肩あるいは腰からぶら下げ、両手で叩きます。子どものためのリズム、求愛のリズム、勇敢な戦士を讃えるリズムなど、様々なバリエーションをもっているそうです。一方、ドゥンドゥンは、ジャンベと一緒に叩かれ、ベースを担当する両面太鼓。くり貫いた木の胴に牛の皮を張って作られますが、大・中・小いろんな大きさがあります。
♪●11月6日、播磨地域を中心に活動する民族音楽グループ・ティーダTeedaの皆さんにお越しいただき、ジャンベ、ドゥンドゥン、バラフォン(木琴)による5人のアンサンブルで、西アフリカの躍動感ある楽曲をご披露いただきました。この日はあいにくの雨模様。秋雨に沈んだランプの家にはランプを点し、その灯りの下、熱く訴えるような演奏が始まると、眠っていた建物が目を覚ますかのようです。小さな子どもも地元の古老も、来場者は、愉しそうに身体をゆらし、心を躍らせます。やがて、人も建物も庭の木々も同じ音楽に身をゆだね、全体を包む空気が一つに解け合って・・・・・・。

♪●雨の日も晴れの日も、ランプの家は、いつも用途にふさわしい佇まいで、集う人たちの気持ちを自然にくつろがせてくれる、おもしろい空間です。紅葉の季節、日本玩具博物館をお訪ねいただいたら、ランプの家の縁側にゆったりと腰を下ろしてみていただきたいと思います。

(学芸員・尾崎織女)


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