今月のおもちゃ
Toys of this month
2020年2月
「源氏枠飾りと芥子雛」
●今春の特別展「雛まつり」では、幕末から昭和初期までの「御殿飾り」を時代を追って一堂にご紹介しています。
●御殿の中の貴族たちの暮らしを再現するような雛飾りは京阪地方独自のもので、江戸時代、最初に御殿飾りが作られ始めたときは、屋根のない形態であったようです。それはまるで「源氏物語絵巻」の“吹き抜き屋台”という構図とも似ていたことから、「源氏枠」と呼ばれるようになります。御殿の中に人形を配置することで、内裏雛、三人官女や随身、仕丁などの役割もよくわかり、飾る中に遊びの要素も加わります。
●写真の資料は、明治時代後期に作られた、黒檀製の繊細な源氏枠飾りです。中には、芥子粒のように小さな雛人形「芥子雛(けしびな)」が飾られています。屋根がないことで、御殿の中の人形たちの表情がよくわかります。 御所のお膝元で生まれた御殿飾りには、それと共に飾られる勝手道具もふくめ“遊び”の要素がふんだんにおり込まれています。これは、平安時代の貴族の少女たちが行っていた“雛遊び(ひゐなあそび)”の世界にもつながるのかもしれません。
(学芸員・原田悠里)