「フィリモノボの馬・ディムコボの馬」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2026年1月

「フィリモノボの馬・ディムコボの馬」

  • 1970~80年代
  • ロシア・トゥーラ州、キーロフ州/土

ロシアにおいて、郷土色ある玩具が各地で盛んに作られるようになるのは日本と同様、近世の終わりころと考えられ、土製玩具の産地は、ロシア内陸部のトゥーラ州やキーロフ州、北部のアルハンゲリスク州をはじめ、今も各地に点在しています。ソビエト連邦が成立した1920年代に施策として取り組まれた民芸再建や1950年代の手工芸の復興運動を通して、作品の製造技術や芸術性の向上が図られたことが大きな力となったと考えられています。

ロシア民芸玩具のなかでひときわ目を惹かれるのは、キーロフ市ディムコボ村の重量感ある土製玩具です。子どもを抱く婦人も、鶏や馬や牛たちも、波打つような輪郭線がやわらかで、白、赤、橙、緑、青に金をさした華やかな彩色と大小の明るい水玉文様が魅力的。ディムコボ村の陶器作りは400年以上の伝統があるといわれます。玩具の製作はもっぱら女性たちの手に委ねられ、その作品の多くが太陽と春を祝う祭礼時に売られ、郷土の人々に愛されてきました。

ディムコボ村の土人形(1980年代製)

ディムコボの馬もまた、大らかでどっしりとしたフォルムに明るい水玉文様が相まって、弾けるような生命感が伝わってくる造形です。馬は、美しい肢体から神の乗りものと考える地域も多く、明るい春や草原が緑にあふれる夏を象徴するものともされきました。

ディムコボ村の土馬(1980年代製)

一方、トゥーラ州オドエフ地区のフィリモノボ村も良質の粘土に恵まれ、陶磁器の生産においては400年の歴史を誇っています。「フィリモンじいさんが土で壺や玩具を作っていた」という伝承があり、それがこの村の名の由来だと聞きます。19世紀の終わりころ、村の7割近くが土製玩具作りに従事していたのが、20世紀初頭には退潮してしまいます。それが1950年代、ディムコボ村の民芸人気に刺激を受けて、フィリモノボ村でも再興への取り組みが加速したようです。

フィリモノボ村の土製玩具—笛に仕立てられています(1960~70年代製)

フィリモノボ土人形の題材には、騎士や狩人、ヤギや牛、トナカイやクマなど、身近な動物が多く見られます。のびやかで動きのある造形と、白地に濃紺、深緑、黄、薔薇色で描かれるストライプや星、ヘリンボーン(ニシンの骨)などの文様が特徴的。また、人形や動物たちが笛に仕立てられているところにもフィリモノボらしい面白さがあります。
フィリモノボの馬も尻尾が吹き口になっていて、胴部に設けられた指孔を開閉しながら息を送ると、ピロピロピロ・・・と明るい高音が鳴り響きます。

フィリモノボ村の土馬(笛)(1970~80年代製)



2026年の干支は「丙午」。午歳の平安を願って、2号館の特別陳列コーナーでは、日本の「馬の郷土玩具展」を開催していますが、4号館2階の常設展「世界の民族玩具」では、ロシアの馬をはじめ、世界各地の馬の玩具をご覧いただけます。ぜひ、それぞれの国の馬の造形表現にご注目ください。

(学芸員・尾崎織女)