今月のおもちゃ
Toys of this month「七夕人形」
短冊を吊るした笹飾り、瓜や胡瓜、茄子などハツモノの野菜。これらを天の川でめぐり逢う牽牛・織女に捧げる七夕まつりは、千年をこえる歴史をもっています。もともと機織の上達を天の二星に願う儀礼として中国から伝来した七夕は、日本文化に溶け込むにつれ、織物や縫物だけでなく、和歌や管弦、書や立花などの上達を祈る一夜の行事へと発展を遂げます。さらに江戸時代後半に入り、農村部へと七夕が普及すると、初秋の豊作祈願や盆の祖霊祭などとも結びついて地域ごとにユニークな行事を形づくり、豊かなバリエーションを見せはじめます。
地方が伝える七夕飾りの中で、全国的に知られているのが、長野県松本市の「七夕人形」です。七夕人形には、紙雛型、流し雛型、着物かけ型、カータリ(川渡り)と呼ばれる人形など、様々な様式がみられますが、写真のものは「着物かけ型」の七夕人形で、松本市内ご出身の女性から寄贈いただいた資料。板製の頭には牽牛と織女の顔が描かれ、それぞれに広げた両腕が着物をかけるハンガーになっています。寄贈者によれば、江戸時代から続く町家の蔵に保管されていたもので、明治初期頃のものと推定されます。
子どもが初節句を迎える家には、親類や縁者からこのような七夕人形が贈られます。「着物かけ型」の七夕人形には、初宮参りの祝い着や晴れ着、浴衣などを着せかけ、他の形式の七夕人形と一緒に、中庭に面した軒下に吊るし飾られます。着物の虫干しを兼ねたものとも、また、子どもが着るものに不自由しないためともいわれます。
写真の七夕人形は、現在開催中の企画展「七夕と夏まつり」の中でご紹介しています。