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blog『中国民衆玩具ー日本玩具博物館コレクション』出版へ
●昨夏より心を傾けて準備を進めてきた書籍『中国民衆玩具―日本玩具博物館コレクション』(当館学芸員・尾崎織女著/高見知香写真/軸原ヨウスケ企画デザイン)の出版準備が整い、7月上旬、大福書林より刊行される運びとなりました。
●当館は、1910~40年代、中国東北部に暮らした日本人の玩具愛好家より、兵庫県神戸市在住の小児科医、尾崎清次氏(1893-1979)のもとへと渡り、のちに遺族から寄贈を受けた約200点の戦前の玩具や、中国民間玩具研究の第一人者であった李寸松氏(1927-2011)から贈られた200点に及ぶ資料群、さらに日本人の中国玩具研究者、伊藤三朗氏(1932-2021)から寄贈を受けた約1,000点のコレクションなど、貴重な品々を数多く所蔵しています。
●本書では、こうした日本玩具博物館の中国玩具コレクションのなかから、東北、華北、華東、中南、西南、西北の六つの地域に分けて、合計83種類の作品を取り上げ、瑞々しい写真を配して、地域的な特徴と造形の美しさを見つめ、その成り立ちについて解説しています。そうして中国大陸の民衆の玩具を訪ねて旅をしつつ、様々な切り口でこの国の人形玩具文化を紹介するコラムを折り込み、また、民衆の玩具世界に熱いまなざしを注いだ日中の蒐集家や研究者たちの業績を、戦前日本の文化人たちが描いた「おもちゃ絵」をまじえて顕彰するものです。掲載作品の総点数は420点に及びます。
●2020年出版の『世界の民芸玩具ー日本玩具博物館コレクション』に引き続き、大福書林の瀧亮子さん、企画デザインの軸原ヨウスケさん、写真家の高見知香さんという、心の通い合う皆さんをお迎えして、去る2月下旬、たっぷり一週間をかけて撮影作業を行ったことは<ブログ「学芸室から」2022年3月7日>でご報告したとおりです。
●本書に掲載された写真の多くは、日本玩具博物館のほど近くにある香寺民俗資料館の民具のある風景の中で撮影されました。日本の民衆の手仕事から生まれた民具のなかで、中国の民衆の手で作られた玩具たちは、安心したように自身のもつ素朴な美をひろげ、高見さんの清新なまなざしによって、本書のテーマに適ういくつものカットが生まれました。本書のページを少しお目にかけたく思います。
●民俗資料館だけでなく、当館の周囲の農村風景の中でも、スタジオ(6号館2階)でも、玩具の魅力を引き出す写真をたくさん撮影していただきました。また、子どもたちにも撮影作業に協力してもらい、楽しいページがいくつもいくつもあるのですが、ぜひ、本書を手にとってご覧くださいませ。
●5月から6月は、数週間かけて校正作業を。何度見直しても、また訂正箇所が現れ、編集者の瀧さんやページ作りの軸原さん、デザイン助手の菅原沙耶さんにご迷惑をかけつつ、ぎりぎりまで・・・。
●表紙をはじめ、コラムや読み物のページを彩る切り絵は、軸原ヨウスケさんの制作で、中国伝統の剪紙の味わいを取り入れつつ、軸原さんの独創性が豊かに薫っています。地大物博、歴史悠久、人口衆多を誇る中国大陸の玩具たちを詰め込んで、手のひらに抱けるかわいらしいサイズの一冊に仕上がる予定です。7月上旬、発刊されましたら、どうぞお手にとってご覧くださいませ。
※現在は大福書林のサイトでの予約が開始されていますので、ご案内させていただきます。
大福書林の予約ページ・・・ 大福書林 (daifukushorin.com)
(予約7/12ごろ発送)中国民衆玩具 | 大福書林 DAIFUKUSHORIN (stores.jp)
●また、今年夏から秋にかけて6号館で開催予定の特別展「中国民衆玩具の世界」(7月9日~10月23日)は、この書籍の出版を記念するものでもあります。ただいま、パネルやキャプションの作成、また展示品の準備などを行っている真っ最中です。本書は、ミュージアムショップでも入手いただけますので、どうぞ本書を片手に展示をお楽しみいただければ幸いです。
(学芸員・尾崎織女)
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