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学芸室から 2022.12.11

玩具博物館のクリスマスアドベント・第三主日~ワークショップのこと、ランプの家の和製クリスマスツリーのこと

クリスマス・ワークショップ

クリスマスアドベント・第三主日。午前中からご家族連れのご来館も多く、たまたまご一緒になられた見ず知らずのご来館者同士、温かな笑顔を交わしながら観覧しておられる風景に心が和む日曜日です。
昨日は、3年ぶりに対面でのクリスマス‣ワークショップを開催いたしました。3歳の小さなお子さんからお祖母さままで、様々な世代の方々がクリスマスツリーを囲み、優しいまなざしでマツカサを手のひらに抱いてチクチクと…。集われた皆さまの思いやりを持ち寄ることで、ひとときコミュニティが出来上がるのも博物館の催事ならではだと思います。その様子を画像でご覧ください。

「マツカサの妖精」のツリー飾りを手作りしてみたい方々には、一昨年のブログ「学芸室から」(→こちら)をぜひご参考になさってください。また来冬も手作りのクリスマスを楽しむワークショップを開く予定です。時期が近づきましたら、ホームページなどでご案内させていただきます。


ランプの家のクリスマスツリー

ところで、今冬は、ランプの家に和製のクリスマスツリーを3本展示しております。ひとつ目は、太平洋戦争に敗戦した日本がアメリカ合衆国の占領下にあった昭和20年代前半のクリスマスツリーで、張り子のベル、ブーツ、星をアルミ箔で覆った素朴なオーナメント、それに三色の「経木モール」が掛けられています。戦前戦後を通じて、マツやヒノキを薄く挽いた経木から作られるロープ状のモールやクリスマスツリーは、神戸港から欧米へ輸出されるクリスマス商品の主力を担い、戦後すぐのころは、神戸の街にはクリスマス商品をつくる工場が立ち並んでいたそうです。素材となる経木は、兵庫県丹波地方の柏原町などで盛んに生産を行っていたらしいことは、2018年のブログ「学芸室から」(→こちら)でもご紹介したとおりです。

輸出商品であったためか、こうしたオーナメントは国内にはあまり遺されておらず、神戸の方々にあっても目にされる機会はないようで、当館が2018年に入手した資料は非常に貴重なものとなっています。先月、経木モールについてグループで探究しておられる神戸シニアカレッジの皆さんが、この経木モールの実物を取材したいとお越しになられ、実物を前に「やっと巡り合えた!!」と感激されました。

ふたつ目は昭和30年代のクリスマスツリー。合成樹脂製のもみの木を植木鉢風の台に刺し立て、枝々に硝子ボールや人工素材モール製のサンタクロース、キャンドルなどがつるされています。「クリスマス飾り」として、すべてをパッケージに詰めて販売されたもので、白い綿の雪もセットされていました。❝もみの木に綿の雪❞というのは、実は日本オリジナルです。赤や桃色、黄色などのモール製サンタクロースを記憶されている方々は30代から80代・・・と幅広い年齢層に及び、ランプの家の畳の間で、「このサンタさんの飾り、家にもあった!!」とか「うわぁ~、懐かしい!!子どものころのクリスマスツリーは、まさにこれやったぁ!!」とか、来館者から歓声があがります。

そしてみっつ目は2メートルほどの高さがあるクリスマスツリーで、1998年、日本クリスマス工業会の中心的な役割を担ってこられた神戸産業株式会社(かんべさんぎょうかぶしきがいしゃ/本社=神戸市)と中城産業株式会社(なかじょうさんぎょうかぶしきがいしゃ/本社=姫路市)から寄贈していただいた品です。「世界のクリスマス展」を繰り返し開催している当館へのご厚意の深さはもちろんのこと、高品質で知られる日本製クリスマスツリーを展示に加えることで、当地のクリスマス産業の歴史にも目を向けてほしいという願いが込められています。

久しぶりにランプの家の板の間に飾りました。日本の民族性が前面に出された品ではなく、欧米のスタンダードに合わせた工業製品ですが、6号館の世界のクリスマス展示に合わせて和製クリスマスツリーをお楽しみいただきたいと思います。

(学芸室・尾崎織女)


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